上半身の症状
当院では、首・肩・肘・手などの上半身の痛みやしびれといった症状の場合は、それぞれの症状に合わせて診察を行います。
診察の際には、医師の指示のもとレントゲンやエコー(超音波)などの検査を行います。
また、症状の原因が整形外科疾患の可能性が低い場合は内科の診察を受けていただくこともあります。
総合的な診察の結果をもとに治療計画を立てていきます。
ここでは、上半身に起こる症状の一部を紹介いたします。
首の痛み
首の骨は頚椎といい、脊椎の一部です。頚椎は、7つの「椎骨」と椎骨間にあるクッションの役割を持つ「椎間板」から構成されています。
頭を支える首は動きが多いため、負担がかかりやすくさまざまな症状が出ます。
症状
痛みやコリがある・首を動かすと肩甲部から上腕にしびれや痛みがはしる・首を傾けて動かせない・両手両足がしびれる・歩きにくい・階段が下りづらい・よくつまづく・箸使いやボタンかけのような細かい作業が難しい
主な原因
頚椎椎間板ヘルニア・頚椎症性脊髄症・頚椎症性神経根症・後縦靱帯骨化症・黄色靱帯骨化症・斜頚・外傷性頚部症候群・頚肋・腕神経叢損傷・胸郭出口症候群・側弯症・脊髄腫瘍・転移性脊椎腫瘍・脊髄損傷
代表的な病気
頚椎椎間板ヘルニア
首や肩甲部、肩から手にかけて痛みやしびれを伴うことがあります。
原因
背骨をつなぐクッションの役割をしている椎間板が、主に加齢変化により後方に突出することによって脊髄や神経根を圧迫して症状が出ます。また、悪い姿勢での仕事やスポーツなどが誘因になることもあります。
治療方法
薬物療法や牽引療法、症状によってはエコーを用いて神経ブロック注射を行います。
変形性頸椎症・頚椎症性脊髄症
首の痛みや肩こり以外に、両側の手足がしびれる、ボタンかけが難しくなる、歩行障害が出ることもあります。
原因
椎間板は、長年にわたり頭部を支えながら動くことで、少しずつ潰れるなど変化してきます。そのため後方の関節が変形し、慢性の痛みが生じるようになります。
治療方法
内服薬やリハビリテーションによる治療を開始しますが、症状の進行度によっては、MRIやCTといった精密な検査を要するため、適切なタイミングで総合病院と連携を取り合います。
肩の痛み
肩周辺には筋肉や関節・靭帯・骨などさまざまな組織があり、肩の痛みの多くは筋肉の緊張による血流障害が原因で起こりますが、関節や骨など他の組織が障害されて痛みが起こる場合もあります。また、体の病気も肩の痛みの原因になることがあります。
症状
肩を上げると痛い・肩を上げられない・夜寝返りをすると痛みで目が覚める・じっとしていても痛い・ボールを投げようとする動作で痛みや違和感がある・簡単な動作で肩がはずれるような感覚がある
主な原因
肩こり・翼状肩甲骨(翼状肩甲)・五十肩(肩関節周囲炎)・肩腱板断裂・石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)・腕神経叢損傷・胸郭出口症候群・反復性肩関節脱臼
代表的な病気
肩こり
首すじや、首のつけ根から、肩または背中にかけて張った・凝った・痛いなどの感じがします。また、症状によって頭痛や吐き気を起こすことがあります。
原因
首や背中が緊張するような姿勢での作業や、猫背など姿勢が良くない場合、運動不足、精神的なストレス、連続して長時間同じ姿勢をとることなどで起こります。
治療方法
温熱療法・運動療法・薬物療法・注射療法などを行います。
肩関節周囲炎
肩関節の痛みが動かすときに増強するため、可動域が徐々に狭くなります。肩関節に負担のかかる寝方や寝返りによって、就寝時に痛みが強く出ることで不眠症になることもあります。
原因
関節を構成する骨・軟骨・靱帯や腱などが老化して、肩関節の周囲の組織に炎症が起きることが主な原因と考えられています。しかし中には、QLS(四辺形間隙)という筋肉と骨に囲まれた部位を通る腋窩神経が圧迫されることにより引き起こされる疼痛など、原因が神経の圧迫による痛みもよくあります。
治療方法
疼痛の原因を見極めたうえで、消炎鎮痛剤の内服や関節内注射やハイドロリリース注射などで痛みを抑えます。また、可動域の改善目的に運動療法や物理療法リハビリテーションなども行います。
肘の痛み
日常生活で同じ動作の繰り返し、長時間の作業、スポーツなどで肘関節に負担がかかったときに痛みが生じます。
症状
物をつかんで持ち上げると肘が痛む・タオルを絞ると痛む・テニスをすると痛む・ボールを投げると痛む・肘を動かすと痛む・肘を完全に曲げたり伸ばしたりできない・肘周囲がしびれる
主な原因
肘部管症候群・テニス肘(上腕骨外側上顆炎)・肘内障・上腕骨顆上骨折・野球肘・変形性肘関節症・前骨間神経麻痺・後骨間神経麻痺・尺骨神経麻痺
代表的な病気
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)
物をつかんで持ち上げる動作やタオルをしぼる動作をすると、肘の外側から前腕にかけて痛みが出ます。多くの場合、安静時には痛みはありません。
原因
物を持って手首や指を伸ばす動作が繰り返されることで、肘に付着する筋肉に負担がかかり炎症が起きます。テニスやゴルフなどのスポーツを続けてきた方などに発症することが多いです。
治療方法
手首や指のストレッチ、湿布・外用薬の使用、専用のバンド使用、運動療法や物理療法、注射療法などの保存療法で多くの方の症状が改善します。
手・指の痛み
指や手の使いすぎや変形、加齢などにより、動かすたびに関節軟骨の摩擦による炎症や、腱鞘が腫れたり腱が肥大することによる通過障害が原因と考えられます。
症状
指を動かすと痛い・引っかかる・伸ばそうとすると痛む・手首を動かしたり、親指を動かすと強い痛みが出る・指がしびれる・握力が落ちる・手首に力が入らない
主な原因
腱鞘炎・ばね指・母指CM関節症・ヘバーデン結節・マレット変形・デュピュイトラン拘縮・ガングリオン・橈骨神経麻痺・正中神経麻痺・尺骨神経麻痺
代表的な病気
腱鞘炎
指の腱鞘が何らかの原因で厚くなったり硬くなったりし、腱鞘を通過する腱と腱鞘がこすれ合い、炎症が起き、痛みや腫れが現れる症状です。
さらに腱鞘炎が進行すると「ばね指」と呼ばれる症状が出ることがあります。
原因
更年期の女性に多く、妊娠出産期の女性にも多く生じます。手の使いすぎやスポーツや指を良く使う仕事の人にも多いのも特徴です。
治療方法
外用薬やレーザー療法、運動療法、腱鞘内ステロイド注射などの保存療法を行います。保存療法で治らない場合や指が曲がったまま伸びなくなると手術を要することがあります。
その他の症状や病気について情報をお探しの方は、
日本整形外科学会のサイトにて、病状・病気の解説をご確認ください。